恋愛小説No.27「自慢の婚約者」

エリザベスには自慢の婚約者がいた。
端正な顔立ちに温和な性格で、名前をロベルトといった。

ロベルトは、昔から女性に大人気だった。
そんな彼も、結婚適齢期になると多くの縁談が舞い込んできた。
しかし、彼はその中の一つも受けなかった。
なぜなら彼は同級生のエリザベスを秘かに想っていたからだ。

「エリザベス!僕と婚約して下さい!」

今から一か月前のこと、私の家にやってきたロベルトが真剣な眼差しでそう言った。
私は驚いて言葉を失った。
まさか彼が私のことを好きだなんて……嬉しくて涙が出そうになる。

「はい……私でよければ……喜んで」

私は彼の告白を受け入れた。

しかし現在。
彼は私の正面で顔をしかめていた。

「エリザベス……婚約破棄してもいいよね?」

「えっ……」

唐突な発言に耳を疑う。

「だって君って陰気臭いし、性格悪いし、それにブスだし。正直言って一緒にいると息苦しいんだよね。だからもう終わりにしたいんだ」

「……」

私はショックを受けた。
今まで生きてきた中でこれほどまでに傷ついたことはないだろう。
信じていた彼からの中傷に心が重くなる。

「ごめんね?でも僕のこと愛しているから許してくれるよね?実は他に好きな人ができちゃってさ」

彼は申し訳なさそうな表情を浮かべながら言った。
しかし微かに笑みがこぼれている。

その瞬間、怒りが爆発した。

「ふざけないで!!」

私が怒鳴ると、ロベルトは驚いたように目を丸くした。
しかしすぐにニヤリと笑みを浮かべる。

「ふーん……そんなこと言える勇気が君にあったんだね。ふふ」

余裕たっぷりな態度を見せる彼にイラつきを覚える。

「もういい!!二度と私の前に姿を見せないで!!!」

私は泣きながら叫ぶと、そのまま部屋を出ていった。
その後、私とロベルトと婚約破棄をした。
両親からはひどく怒られたけど、あんなやつと結婚させられるよりかは何倍もマシだと思った。

婚約当初の熱は冷めきっていた。

それから数日後。
私の元に幼馴染のエリックが訪れた。
久しぶりに会う彼は少し大人びていて格好よくなっていた。

「久しぶりだな。元気にしてたか?」

「うん……まあそれなりに」

私は作った笑顔で答えた。
しかし彼はそれを見破ったのか、訝し気な視線を私に向けた。

「お前、何かあっただろ?俺には分かるぞ」

「別に何もないよ」

私は強気に言い返す。
すると彼は小さくため息をつく。

「嘘つけ。俺はお前の幼馴染なんだぞ?隠しても無駄だ」

彼の言葉に思わず胸が高鳴った。
私は素直に白状することにした。

「実はね……婚約者に振られちゃって……」

「何だと!?誰だよそいつは!!」

彼は声を荒げた。
こんなにも感情的になる彼を初めて見たかもしれない。

「それがね……」

そして事の経緯を説明した。
話を聞き終えた彼は頭を抱えた。

「そんな……マジであり得ないな。婚約者がいる身でありながら他の女に手を出すとか……最低すぎる」

「本当そうだよね……」

同意するように相槌を打つ。

「それで……これからどうするんだよ?」

「分からない。まだ頭が混乱していて……上手く考えがまとまらないんだ……」

私の言葉にエリックは真剣な顔になった。

「それなら……俺と一緒に暮らさないか?」

「えっ……」

突然の提案に驚く。

「お前さえ良ければの話だけど……」

彼は照れ臭そうに頬を掻いた。
私は数秒の後、決心した。

「ありがとう……私でよければ……」

こうして私たちは同棲を始めた。
最初はぎこちなかったものの、次第にお互いの距離が縮んでいった。

幸せな日々が続く中、ある日のことだった。
エリックからプロポーズされた。

断る理由などなかった。
むしろ大歓迎だった。
彼と一生を共にしたいと思っていたから。

こうして私はエリックと結婚を果たした。

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